高次方程式の数学難問!n次方程式、n次多項式と素数~北海道大学(理学部、工学部)の過去問
今回は、高次方程式(n次方程式、n次多項式)の応用問題について、実際の大学入試数学で出題されたものを題材に学んでいきましょう。
数Ⅱの分野ですので、難関大学もしくは数学で難問が出題される志望校を受験される方は、文系理系ともにこの例題を解いてもらいたいと思います。
今回、解くために必要な知識はコレです。
n次方程式は重解をまとめて1個の解とせずに、それぞれ1個ずつとカウントすると、ちょうどn個の解が存在する。※つまり、2重解を2個の解として、3重解を3個の解として、というように、k重解をk個の解として数えると、n次方程式には、n個の解が存在する。
それでは問題を見てみましょう。
n次方程式~n次多項式と素数の難問
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Pを素数とする。 整数を係数とするn次多項式\(f(x)\)で、次の3つの条件をすべて満たしているものをすべて求めよ。 ①:\(x^nの係数は1\) (n≧1) ②:\(f(0)=p\) ③:方程式\(f(x)=0\)の解は相異なるn個の整数 (n≧1) |
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題材:北海道大学~理学部,工学部(2014年) |
難易度:★★★★★★★☆☆☆
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まず、ちょっと考えみて、もしも最初の糸口が見つけにくい場合は、この類の問題の経験値が足りないかもしれません。
なので、そういった方はまず、あまり時間をかけすぎないで、最初の突破口のところだけ解説を読んで、そこから考えてみてください。
それでは解説に移ります☆
高次方程式の難問~n次多項式と素数
まず最初に、与えられた条件のうち、最も検証していける材料となるのが
③の条件
③:方程式\(f(x)=0\)の解は相異なるn個の整数
でしょう。
ここから考えていきます。
n次方程式の性質~n次方程式はn個の解をもつ~
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まず、n次方程式は、k重解をk個の解としてカウントすると、重解以外の解も含めて、合計でn個の解をもつ、ということは問題の前にポイントとして説明していたことです。
今回の条件において、n次方程式\(f(x)=0\)には「相異なるn個の解がある」ということがわかりましたので、「重解はない」ということがわかりました。 なので、n個の解をそれぞれ\(b_{1},b_{2},b_{3},b_{4}, \cdots ,b_{n}\)と表現することができます。 ここが非常に重要で、かつ高度なテクニックなのですが、例えばこのまま③の条件より \(f(x)=0\)を見たす、相異なる整数の解ということで \(f(x)=m(x-b_{1})(x-b_{2}) \cdots (x-b_{n})\) (mは定数) と置くと、あとでわかりますが、とても扱いにくい変形へと導かれてしまいます。 今回の場合は、素数の性質を利用して条件を満たす候補を絞っていくことが第2のポイントなのですが、この式では途中でとてもややこしいことになりますので、次の方法を理解してください。 |
\(b_{1},b_{2},b_{3},b_{4}, \cdots ,b_{n}\)
にそれぞれ-1をかけたものを
\(a_{1},a_{2},a_{3},a_{4}, \cdots ,a_{n}\)
とします。
これらもまた、相異なるn個の整数ですね。
この、相異なるn個の整数を使うと
\(f(x)=m(x-b_{1})(x-b_{2}) \cdots (x-b_{n})\) (mは定数)
は
\(f(x)=m(x+a_{1})(x+a_{2}) \cdots (x+a_{n})\) (mは定数)
へと、表記を変えることができます。
さて、mのポジションには\(x^n\)の係数が入るので、①の条件より、この場合係数は1となって表記は省略、つまり
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2}) \cdots (x+a_{n})\)
ということになります。
ここで②の条件が活躍します。
②:\(f(0)=p\)
この条件とn次多項式を眺めると、こう思いつくのではないでしょうか?
「このn次方程式のxに0を代入すると何が見えてくるだろうか?」
代入してみましょう。
すると、
\(f(0)=a_{1} \cdot a_{2} \cdot a_{3} \cdot a_{4} \cdots a_{n}\)
となりますね。
さらに
②:\(f(0)=p\)なので
\(p=a_{1} \cdot a_{2} \cdot a_{3} \cdot a_{4} \cdots a_{n}\)
となります。
コチラのほうが情報量がありますね。
pは素数ということなので、
この方程式を満たすためには
\(a_{1},a_{2},a_{3},a_{4}, \cdots ,a_{n}\)のなかのどれかが素数pで、それ以外のすべての積が1であるか
もしくは
\(a_{1},a_{2},a_{3},a_{4}, \cdots ,a_{n}\)のなかのどれかが-pで、それ以外のすべての積が-1であるか
ですね。
この条件に加えてさらに
\(a_{1},a_{2},a_{3},a_{4}, \cdots ,a_{n}\)
がそれぞれが異なる整数ですので
\(a_{1}\)をpまたは-pとするなら
\(a_{2},a_{3},a_{4}, \cdots ,a_{n}\)をすべて掛け合わせた結果は
1または-1しかありえないことなり
このようなパターンしか考えられないことになります。
つまり、\(p=a_{1} \cdot a_{2} \cdot a_{3} \cdot a_{4} \cdots a_{n}\)を満たすためには
n=1またはn=2またはn=3の場合しかないことになります。
それぞれ確認していきましょう。
n次方程式の場合分け n=1のとき
n=1のときは
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2}) \cdots (x+a_{n})\)
という先程のn次方程式の表記は
\(f(x)=(x+a_{1})\)
という1次方程式になります。
また、上の説明の絵をご覧になればわかります通り
n=1のときは
\(a_{1}=p\)ですね。
n=1のとき
\(p=a_{1} \cdot a_{2} \cdot a_{3} \cdot a_{4} \cdots a_{n}\) は \(p=a_{1}\) になりましたものね。 |
なので
\(f(x)=(x+p)\)
という方程式が導けました。
n次方程式の場合分け n=2のとき
n=2のとき
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2}) \cdots (x+a_{n})\)
というn次方程式は
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2})\)
になります。
また、
\(p=a_{1} \cdot a_{2} \cdot a_{3} \cdot a_{4} \cdots a_{n}\)
は
\(p=a_{1} \cdot a_{2}\)
となりますね。
先程の説明図でその意味を確認してください。
n=2の時は
\((a_{1},a_{2})\)=(p, 1)または(-p, -1)
だということがわかるかと思います。
なので
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2})\) という方程式は
\(f(x)=(x+p)(x+1)\)
または
\(f(x)=(x-p)(x-1)\)
ということになります。
それぞれの右辺を展開した
\(f(x)=x^2+(p+1)x+p\)
\(f(x)=x^2-(p+1)x+p\)
の右辺が、2つめ、3つめの求めるf(x)ですね。
n次方程式の場合分け n=3のとき
n=3のとき
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2}) \cdots (x+a_{n})\)
というn次方程式は
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2})(x+a_{3})\)
という3次方程式になります。
また、
\(p=a_{1} \cdot a_{2} \cdot a_{3} \cdot a_{4} \cdots a_{n}\)
は
\(p=a_{1} \cdot a_{2} \cdot a_{3}\)
になりますね。
先程の説明図でその意味と状況を確認しましょう。
n=3の場合は
\((a_{1},a_{2},a_{3})\)=(-p, -1, 1)
しかありませんね。
なので、
\(f(x)=(x+a_{1})(x+a_{2})(x+a_{3})\)は
\(f(x)=(x-p)(x-1)(x+1)\)となり、右辺を展開して
\(f(x)=x^3-px^2-x+p\)となります。
つまり、これまでの結果と合わせて
\((x+p)\)
\(x^2+(p+1)x+p\)
\(x^2-(p+1)x+p\)
\(x^3-px^2-x+p\)
の4つが、求めるf(x)となります。
いかがでしたでしょうか?
このように、問題を解く過程において、求めやすいn次多項式に置き換えることによって無理のない検証をしていくことができました。
最初の置き換えが非常に高度だったと思いますが、質問に答える際に、こちらのほうが都合がよかったということを理解していただければと思います。
以上、高次方程式(n次方程式)の大学入試数学の難問について、北海道大学の数学の良問で解説しました。
お疲れ様です☆